エアコンの風から嫌なニオイがして吹き出し口を覗き込んだとき、奥にある筒状のファンにびっしりと付いた黒い汚れを見て、思わずゾッとした経験はありませんか。
その正体はカビやホコリの塊であり、放置すれば部屋中に汚れた空気を撒き散らすことになります。しかし、いざ掃除をしようと思っても、業者に頼めば費用がかかるため、まずは自分でどうにかしたいと考えるのが自然です。
この記事では、自分でエアコンのファンを掃除する方法と、絶対に知っておくべきリスクについて詳しく解説します。読み終わる頃には、自分のエアコンを自分で掃除すべきか、プロに任せるべきかを正しく判断できるようになります。
1. なぜエアコンのファンは汚れるのか?
エアコン内部のファンが汚れる主な原因は、冷房運転中に発生する結露水と、室内の空気に含まれるホコリが結合することです。
ファンは空気を送り出すために高速で回転していますが、その表面が結露で濡れていると、吸い込んだ微細なホコリが付着しやすくなります。時間が経つにつれて、この湿ったホコリの層がカビの絶好の繁殖場所となり、やがて目に見える黒い斑点や塊へと成長します。
1.1. 結露とホコリの蓄積
エアコンを使用するリビングや寝室には、衣類の繊維やペットの毛、調理中の油煙など、さまざまな汚れが浮遊しています。エアコンはこれらの空気を大量に吸い込むため、フィルターで取りきれなかった微細な汚れが内部へと侵入します。
特に冷房や除湿運転を行う夏場は、内部が常に高湿度状態となるため、ファンに付着した汚れにカビ菌が定着し、爆発的に増殖してしまうのです。このプロセスを知ることで、単に汚れを落とすだけでなく、乾燥させることがいかに重要かが理解できます。
2. 自分でファン掃除をするメリットとリスクは?
自分でファン掃除を行う最大の魅力は費用の安さですが、そこにはエアコンを故障させるリスクや、想像以上の手間がかかるというデメリットも潜んでいます。
手軽に始められるイメージがある一方で、内部構造は複雑であり、水や洗剤を使ってはいけないデリケートな部分も多いため、安易な作業は禁物です。以下の表で、自分で掃除する場合とプロに依頼する場合の違いを比較して確認しましょう。
| 比較項目 |
自分で掃除する場合 |
プロに依頼する場合 |
| 費用 |
数千円(道具代のみ) |
1〜2万円程度 |
| 洗浄範囲 |
届く範囲の表面のみ |
分解して内部まで |
| 故障リスク |
電装部の水濡れ等あり |
損害賠償保険に加入している業者なら補償あり |
| 仕上がり |
表面のカビは取れる |
奥まで徹底除去 |
2.1. 費用対効果と故障要因
自分で掃除を行えば、専用のブラシや洗浄剤を購入しても数千円で済むため、金銭的なメリットは非常に大きいです。しかし、その代償として「故障のリスク」を背負うことになります。
エアコン内部には水に弱い電子基板やモーターが多く含まれており、養生が不十分で水がかかれば一瞬で故障し、修理代が浮いた掃除代を上回ることも珍しくありません。費用を抑えるつもりが、逆に高くついてしまう可能性を常に意識する必要があります。
2.2. 時間と労力のコスト
ファン掃除は、単に洗剤をかけて拭くだけの作業ではなく、入念な養生や後片付けを含めると数時間の重労働となります。
上を向いた体勢での作業が続くため、首や腕への負担も大きく、慣れていないと途中で挫折してしまうこともあります。また、苦労して掃除をしても、分解しない限りファンの裏側や奥の汚れまでは取りきれないため、労力に見合った効果が得られるかどうかも冷静に考える必要があります。
3. 自分でファンを掃除する前の準備は?
それでも自分で掃除を行うと決めた場合、何よりも重要なのは事前の準備と安全確保です。いきなり掃除を始めるのではなく、環境を整えることで作業効率が上がり、周囲を汚したり怪我をしたりするリスクを最小限に抑えることができます。ここでは、作業を始める前に必ず整えておくべき準備について解説します。
3.1. 安全確保の電源遮断
作業中の感電や予期せぬ動作による怪我を防ぐため、必ずエアコンの電源プラグをコンセントから抜いてください。
リモコンで電源を切っただけでは、内部に電気が流れている可能性があり、水を使う掃除中には漏電のリスクが高まります。プラグを抜いた状態で数分待ち、完全に放電されたことを確認してから作業を開始するのが鉄則です。このひと手間を惜しむことが、重大な事故につながる恐れがあります。
3.2. 必要な道具の準備
ファン掃除をスムーズに進めるためには、専用の道具をあらかじめ揃えておくことが不可欠です。まず、ファンの形状にフィットする「ファン用ブラシ」や「隙間ブラシ」を用意しましょう。歯ブラシでは届かない奥の汚れをかき出すために役立ちます。
次に、汚れを浮かせるための「中性洗剤」または「エアコン専用洗浄剤(リンス不要タイプ推奨)」、そして洗い流すための「加圧式スプレー」や霧吹きが必要です。最後に、汚水を受け止めるための「バケツ」と、拭き上げ用の「タオル」や「雑巾」を多めに用意してください。
3.3. 徹底的な養生の実施
エアコン掃除の成否は、養生の丁寧さで決まると言っても過言ではありません。洗浄液や黒い汚水が壁や床、カーテンに飛び散るのを防ぐため、エアコン周囲をビニールシートで隙間なく覆う必要があります。
市販の「エアコン洗浄カバー」を使用するのが最も確実ですが、大きなゴミ袋を加工して代用することも可能です。特に、エアコン本体の右側にある電装ボックス周辺は、水が一滴でも入ると故障の原因となるため、タオルやラップで厳重に保護してください。
4. 自分でファンを掃除する具体的な手順は?
準備が整ったら、いよいよ実際の掃除作業へと移りますが、焦らず一つひとつの工程を確実に行うことが大切です。ファンの汚れは頑固で落ちにくいため、力任せに擦るのではなく、汚れを浮かせてから取り除くという手順を守りましょう。ここでは、失敗を防ぐための具体的なステップを解説します。
4.1. ホコリを事前に除去
洗浄剤を使う前に、まずはファンや吹き出し口周辺に付着している乾いたホコリを掃除機で吸い取ります。ホコリが残った状態で水分を含ませると、汚れが泥状になってこびりつき、かえって掃除がしにくくなるためです。ハンディモップや掃除機の隙間ノズルを使い、目に見えるホコリを可能な限り取り除いておくことで、その後の洗浄効果が高まります。
4.2. 洗浄剤の塗布と浸透
ファン全体に洗浄剤をムラなく吹き付けますが、このときファンを手で少しずつ回しながら全周に行き渡るようにします。洗剤をかけたらすぐには擦らず、汚れが浮き上がってくるまで15分から20分程度放置する時間を設けてください。この「つけ置き」の時間が、こびりついたカビや油汚れを柔らかくし、軽い力でも落としやすくするための重要なポイントです。
4.3. ブラシによる汚れ除去
洗剤が浸透したら、用意したブラシを使ってファンの一枚一枚を丁寧に擦っていきます。ファンは筒状で羽が細かく並んでいるため、ブラシを差し込んで奥から手前へと汚れをかき出すように動かします。
強く擦りすぎると羽が折れたりバランスが崩れたりして異音の原因となるため、優しく根気強く作業を進めることが求められます。この工程が最も時間がかかりますが, 仕上がりを左右する重要な作業です。
4.4. 洗浄成分の完全除去
汚れが浮き上がったら、よく絞った濡れタオルで拭き取ります。エアコン内部に直接水がかかると、電装部にかかって故障する恐れがありますので、十分に注意してください。
4.5. 内部乾燥の徹底実施
掃除が終わったら、タオルで水分を拭き取り、最後に必ず「送風運転」を1時間から2時間程度行って内部を完全に乾燥させます。
見た目が乾いていても、内部の細かい隙間には水分が残っていることが多く、そのまま放置するとすぐにカビが再発してしまいます。送風運転を行うことでファンの回転による遠心力と風の力で水分を飛ばし、カビの発生しにくい状態を作ることが掃除の仕上げとなります。
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5. 市販の洗浄スプレーを使う際の注意点は?
ホームセンターなどで手軽に購入できる「ファン用洗浄スプレー」は便利ですが、使い方を誤るとトラブルの原因になります。スプレーの噴射力だけで汚れを落としきれるわけではなく、あくまで汚れを浮かすためのものと理解しておくべきです。ここでは、市販スプレーを使用する際に特に注意すべき点について解説します。
5.1. 洗剤残りとカビ再発
市販のスプレーを使用した後に最も多いトラブルが、すすぎ不足による「洗剤残り」です。多くの製品は「洗い流し不要」と記載されていますが、実際には溶け出した汚れや洗剤成分がファンに残留し、それが接着剤のような役割を果たして再びホコリやカビを吸着してしまうことがあります。
スプレーを使用した後は、水スプレーで念入りにすすぎを行うか、説明書よりも長い時間送風運転をして成分を飛ばすなど、カビの再発を防ぐための追加ケアを行うことをおすすめします。
6. プロに依頼すべき判断基準は?
自分で掃除できる範囲には限界があり、状況によっては無理をせずプロのクリーニング業者に依頼する方が賢明な場合もあります。無理に作業を進めてエアコンを壊してしまっては元も子もありません。
以下のようなケースに当てはまる場合は、プロへの依頼を検討すべきタイミングと言えます。
6.1. 機種と汚れのレベル
エアコンが「お掃除機能付き」の複雑な機種である場合や、設置から5年以上経過して一度も内部洗浄をしていない場合は、プロに任せるのが安全です。
お掃除機能付きエアコンは内部構造が複雑で、分解や養生が難しく、水濡れによる故障リスクが格段に高くなります。また、長年蓄積した硬いカビ汚れは市販の道具では落としきれないことが多く、高圧洗浄機による強力な洗浄が必要です。自分で手に負えないと感じたら、素直にプロの技術に頼ることが、結果としてエアコンを長く快適に使うための近道です。
7. 掃除後のキレイを長持ちさせる方法は?
苦労して掃除をしたエアコンを、少しでも長く清潔な状態で保つためには、日頃の使い方を少し変えるだけで大きな効果が得られます。カビの発生原因である「湿気」をコントロールすることが、予防のカギとなります。今日からすぐに実践できる、最も効果的な予防法を紹介します。
7.1. 冷房後の送風習慣
冷房や除湿運転を使用した後は、必ず「送風運転」を30分から1時間程度行い、内部を乾燥させる習慣をつけてください。最近の機種には、電源オフ後に自動で乾燥運転を行う「内部クリーン機能」がついているものも多いため、この機能を常にオンにしておくことが大切です。
たったこれだけの習慣で、カビの繁殖スピードを劇的に遅らせることができ、次回の掃除までの期間を長く延ばすことができます。
8. まとめ
この記事の要点をまとめます。
・エアコンのファン汚れの原因は結露とホコリの結合であり、放置するとカビが繁殖する
・自分で掃除する場合は、徹底的な養生と電源プラグを抜く安全対策が不可欠である
・掃除後は水分と洗剤を完全に除去し、送風運転で内部を乾燥させることが再発防止の鍵となる
エアコンのファン掃除は自分で行うことも可能ですが、リスクと手間を正しく理解した上で取り組むことが大切です。無理のない範囲でケアを行い、快適な空気を取り戻しましょう。
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